さすがに函館現地は無理があった。
ラブライブ!のライブでは、全体ライブの1コーナーとなってしまいがちな、いわゆるスピンオフ・ユニットだけを集めたライブ。
実は音楽的にはユニットのほうがやりたい放題と言う感じで、わかるところでわかってしまうと「わかる笑い」がこみ上げてくることもしばしば。
しかしあくまで全体ライブの中の1パートということで、全てのライブ全体のなかで1度きりになってしまう曲なども存在し、もったいなさを感じないといえばそうではない状況が続いていました。
けれどこのライブはそのユニットの曲だけが聴ける!見れる!
そんな気軽な気持ちでLVに足を運んだものの、このような形式のライブはμ’s時代から振り返っても初めての試み。純粋な楽しみと、未知のものに少し気構える心を持ち合わせてのライブ開始となりました。
「Aqoursがいなかった」。
いや、ユニットカーニバルだからあたりまえなんだけど、そのことに一日目が終わるまで気がついてなかった。
函館というaqoursにとってアウェーの地で開催される、Saint snow Presentsのユニットフェス。つまり、aqoursはメインではないのですね。
しかも付け加えるならば、TVアニメでのライバルであるSaint Snowに対して、Aqours内のユニットはアニメの中では存在していません。
概念の枠さえ取っ払って構成されたこのライブは、スタッフの方たちも含め全てが初めての試みであり、イベントの進行や構成、パフォーマンスに至るまで並々ならぬ苦労があったのだろうと感じました。
やはり最大の特色は、Aqoursが、伊波さんが、千歌ちゃんが座長ではない、ということでしょう。
その状態で保つべき自分達の距離感を、1日目の序盤、Aqours9人がはかりかねているようにも見受けられました。
普段はユニット曲は、メンバーの歌唱に合わせてCDに収録されている歌も一緒に流れているのですが、なんと今回はそれがほとんどありませんでした。なので全員の歌唱力がもろにライブに出るという状況だったのですが、一日目は、「普段ほとんど音程をはずさない人」でさえ外していたり、PA側が歌を拾う声のレベルの閾値に迷っているようなところもあり、短いスパンでライブを重ねある程度の錬度があると思われるチームでも、相当の苦労があったのではないでしょうか。
逆にだからこそ、あの場で初めてラブライブ!のステージに立つSaint Snowの二人が輝いていたようにも見えます。
会場全てに安定した期待とその裏に潜む未知への不安がない交ぜになっていた状況で、ハードな曲調とそれをしっかり捌ききるハードなパフォーマンスで空気の混沌を吹き飛ばし、会場を一気にライブに引きずり込むパワーを見せてもらったように思えました。
期待されていたAwaken the Powerこそありませんでしたが、2日目に発表されたメディアのマルチアングル収録を聞いたとき、とてもそんな余裕などない、「先」への先行投資も兼ねたチャレンジが舞台上でも舞台裏でも行われていたのだなと感じました。
個人的に見ていて面白かったのが、マルチアングルが発表されたときのAqours全員の「マジかよ」「ないない」「勘弁してよ……」みたいなリアクション。後ろを向いているときは表情筋も少し緩めているような話はμ's時代もラジオか何かで出ていた気がするので、見る僕らは嬉しいですが演者としてみればこれまで以上に気が抜けなくなってしまうのであり、技術の進歩も良し悪しだなあと思うなどしました。
先にも述べましたが、今回のユニットライブはこれまでとはちがってほとんどCDとの被せがない状況で、個々の力がよりネイキッドにあらわにされ、それゆえにそれぞれのユニットの特色が強く出るプロジェクト全体を通しても稀有な内容でした。
ユニット別の雑感を最後に記して、この記事の締めくくりとしたいと思います。
Saint Snow
すっご!!!!
アニメ本編でAqoursの前に立ちはだかる様は伊達ではなかった……。
鹿角聖良役の田野アサミさんのとんでもないボーカライズと、その姉さまを中央においてステージを駆け回りオーディエンスをパワフルに煽りまくる鹿角理亞役の佐藤日向さん。
ユニットの力はひょっとするとイベント中トップクラスと言っても過言ではありません。
ライブを見て思ったのは、デュオと言うよりは、1Vocal+1MCのように思いました。
変なたとえをすると、「ビックバイパーとロードブリティッシュ」ではなく「R-9とフォース」なんだなと。
だからこそ、今度は理亞ちゃんメインの曲を見てみたいですね。
AZELEA
ナリは可愛い、本質は美しい。それがAZELEA。
キャストの中で背の高い三人が並ぶことで醸し出される視覚的効果は圧倒的。
音楽的にはエレクトロ全開で、ある意味昔からのユニットの中で最も現代的であると言えます。
個人的に好きなのはINNOCENT BIRD。あの曲だけはAZELEAが普段隠している「牙」が見えるので大好きです。
- ・小宮有紗さん(黒澤ダイヤ役)
- AZELEAに咲く大輪の花。LVでアップで抜かれると会場のどこかに漏れなく女性ファンのため息が起きるんですよ。その一挙手一投足は見るものを惹きつけずにはおれません。GALAXY HidE and SeeKの最初の歌詞がダイヤさん=小宮さんによって歌われるのってすごい素敵だと思ってます。あの瞬間の小宮さんすっごい素敵です。
- ・高槻かなこさん(国木田花丸役)
- AZELEAの歌の屋台骨。Aqoursでも最上級の優れた歌唱力と独特の歌い方は国木田花丸ワールドとAZELEA楽曲ワールドを決定的に方向付ける重要な要素です。最近はインスタに写真を上げるたびにキレイになっていくすごい人。「なりたいものは、自分」って感じがしてすごい素敵です。
- ・諏訪ななかさん(松浦果南役)
- 他の二人を影に日向に支えつつ、ひとたび前に出るとそのコケティッシュな佇まいが見る者の心を例外なく刺し貫きます。本当のセクシー担当はこの人かもしれない……。ローテンションのゆるMCもいまやAZELEAの華。今回は衝撃の髪おろしでのライブアクトもあり、メチャクチャ素敵でした。
CYaRon!
いつも出力がブレないんだよなあ……。キャラクター没入度が高い次元で安定していて、ステージ上にメンバーを降臨させてくれます。今回は『元気全開DAY!DAY!DAY!』からの『近未来ハッピーエンド』という、死ぬんじゃないのかというセットも、高い降臨度のままこなしてくれました。ちなみに、僕がいたLV会場では海岸通りの「ズチャチャチャズチャチャチャ」まで本番のコールに入ってしまいました。
- ・伊波杏樹さん(高海千歌役)
- 座長ではない、Aqoursのリーダーでもない。もちろん100%座長やリーダーではないというわけではなく、要所ではきっちり出てくるのですが、今回は今までにないくらいそこの度合いが低く、純粋に一人の出演者としての千歌ちゃんというレアなものを見れる機会でした。Aqoursのときの背筋を伸ばしたエネルギッシュな感じとは裏腹にCYaRon!では「にょへへへ……」みたいな感じになるのですが、そこがメインになるのもまた新鮮です。と思ったところへのシャロン砲とフラッグの片手持ちはかっこよすぎた。
- ・斉藤朱夏さん(渡辺曜役)
- ステージのバーサーカーはいまだ健在。最近ちょっと思ったんですけど、この人メチャクチャ安定してるな!?パフォーマンスの上手下手ではなく、ステージ上で出力される渡辺曜としての質にほとんど悪い意味でのブレが見えないというか、過不足なく渡辺曜というか……。斉藤さんの持つダンス技術を実は曜ちゃんも持っているのではないかと思わせる何かを感じました。うまく説明できない。
- ・降幡愛さん(黒澤ルビィ役)
- 安心のルビィ変身。でもちょっとずつ降幡さん分も増えている気もします。そこで違和感を感じないのは、2ndツアーやアニメ二期を経てルビィちゃんが成長し、キャラクターの枠が広がってきたことが大きいのではないでしょうか。Awaken the Powerがどう表現されるのか、めちゃくちゃ楽しみです。
Guilty Kiss
モンスター(最大級の賛辞)。
うそでしょ?何この人たち。ここまでのものを見せられるとは思ってなかったんだけど。まさに鬼気迫る勢い。ていうかもともと歌が上手いとはいえ、被せがないことでここまでこのユニットの歌唱力が際立つとはまったく思いませんでした。しかも『Strawberry Trapper』からの『コワレヤスキ』という「死ぬセット」も見れたので大満足です。早くBDでもう一度見たいくらい。
- ・小林愛香さん(津島善子役)
- ダンス、ボーカル、ステージでの動き方、三拍子揃った文句なしにAqours随一の「ステージの申し子」。そして、一番「マス」な歌声を持つ人でもあります。『Strawberry Trapper』や『コワレヤスキ』での存在感は唯一無二。小林さんの声こそがあの二曲のメインにはふさわしい。
- ・逢田梨香子さん(桜内梨子役)
- 小林さん、鈴木さんというAqoursトップクラスの歌唱力の二人を向こうに一歩も引かないくらい歌が上手かったりするんですが、やっぱりその根性がステージに降ろす梨子の決死のパフォーマンスこそがギルキスでの最大の持ち味だと思うんですよね。あの梨子がステージの上で必死であれをやってると思うとゾクゾクしませんか?俺はする。でも落ち着き目の曲だと笑顔で刺しに来るんだよなあ……。
- ・鈴木愛奈さん(小原鞠莉役)
- 何が、何があなたをそこまでさせるんですか。だって一日目の一曲目のストトラで聴こえてきたの、生歌なのにCDと同じ音なんだよ!?Aqours全体曲だとビブラートのやり方とか鈴木さん度高いときもあるんですが、ユニットライブで人が少なくなったらキャラ降臨度どころかCD再現度がこれまでよりももっと高いって……。某雑誌のインタビューで「喉からCD音源の意気込みで」とは書いてあったけど、「CDよりもライブがすごい」を確実にやれる力がある(と思ってる)人があえてこれをやり続けるのは、もう何か特別な信念があるとしか思えません。こうなるとどこかで歌われるであろう「New winding road」が俄然楽しみになってきました。フル版はどうなのか、それをライブでどう料理するのか、本当に聴くのが待ち遠しいです(歌うライブを見れるかどうかは別として(現地全落(LVのあるときにやってくださいお願いします)))。